社団法人飯田青年会議所
理事長対談
理事長対談  飯田市 牧野光朗市長
 

理事長対談  飯田市 牧野光朗市長

 理事長:飯田市の1番の魅力は
 
 市 長:魅力を語り出したらとても1時間では終わらないくらいの魅力が飯田には存在しますが、私が飯田の魅力を語る時、まず始めに何処の地域や風景から説明すると思いますか。
 
 理事長:どこでしょう。たとえば「笠松山から見た飯田市内の風景」ですか。
 
 市 長:それもありますが、まず始めに説明するのは中山間地です。上流から話を始め、農村地域、そして街中の説明をします。よく使うのが上村下栗地区、斜面傾斜角30度以上の急斜面で農家の方々が農地を耕している風景ですね。日本にもまだこの様な風景が存在することを説明します。そして棚田や柿すだれの風景を示します。農村を中心にした発展が街の発展に繋がり、そしてりんご並木を中心とした現在の街並みの発展に繋がったという流れで飯田の魅力を語っています。
 
 理事長:とても一言では言い表せないくらいの数々の魅力が飯田には存在するのですね。その中で多種多様な文化が成り立ってきた訳ですね。
 
 市 長:まさにそれが1番の飯田の魅力なのです。これだけ多様な文化が存在する地域は他にはなかなかないと思います。中山間地域を中心に現在は人口減少などで大変な時期を迎えてはいますが、こういった伝統文化はこれからもしっかりと残していかなくてはなりませんね。
 
 理事長:わたしも大変重要だと思います。これからは例えばインフラの発展であるとかそういった要素もこの飯田地域に影響を及ぼしてきます。これらの要素も踏まえ「世界に輝ける南信州、飯田市」に繋がっていくのだと思います。では牧野市長の考える飯田市の未来像についてお聞かせください。
  
 市 長:これは飯田だけではなく、飯田下伊那全体に関わってくる話です。今年の7月に全国に先駆けて下伊那の町村長さん方と締結させていただいた定住自立圏形成協定がまさにこの地域の将来の方向性を見据えて行なったものです。中心市である飯田市と13町村が役割分担をして人口減少に歯止めをかけていこうという部分が注目を浴びておりますが、都会に行っている若者が飯田下伊那に戻ってこられる「人材サイクル」の構築も重要な要素の一つです。また、中心市となる飯田市にも山があり、里があり、街がある訳で、市内の中山間地や街中でも人口減少は起こっているわけです。こうした中で市町村が役割分担をして定住のために必要な生活機能等を補完したり整えていくことが重要であると思います。それが定住自立圏構想の考え方です。

 理事長:本年JCでは衆議院議員総選挙で公開討論会を行ってまいりましたが、その中で候補者に必ず聞いたのは、来る2025年には日本は大きく社会構造が変わってくると言われており、それを視野にいれた国家ビジョンです。人口減少、少子高齢化、労働人口の減少など牧野市長のおっしゃる話はごもっともだと思います。人材サイクルの構築等、飯田市を頼りにしている町村は多いと思います。 
 飯田市は中心都市として責任をしっかり果たしていかなければなりません。共生ビジョンとしてまずしっかり取り組まなければならないのは地域医療の充実だと思います。命を守るセーフティネットの構築を飯田市だけではなく圏域全体で考えていかなければならないと思います。生活圏を共有している南信州、飯田下伊那全体で作っていくことが大事ですね。
 
 市 長:地域医療の充実は、定住自立圏の構築に繋がる最も重要な要素だと思います。当圏域では、点としての医療をネットワークにより連携し、医療機関同士の合理的・効率的な役割分担ができるように取組んでいますが、問題はこの点を繋ぐ道路ネットワークです。命を繋ぐ「道」としてますます充実させていかなければなりません。それは南信州の中だけではなく三遠南自動車道も同じです。この道路は中山間地域の命を繋ぐセーフティネットのモデルの一つと言っても決して過言ではないと思います。
 
 理事長:それでは牧野市長の考える飯田市のビジョンについて一言でお話願います。
  
 市 長:「若い人たちがこの地域で安心して子育てができ、命を繋いでいくことができる地域」です。これからの地域の伝統文化の継承を考えれば「魂」を繋いでいくことができる地域を目指すとも言えるでしょう。
 
 理事長:人口減少、少子高齢化社会の中で公民館活動の減少や消防団活動の減少などコミュニティの低下も大変心配するところですが。
 
 市 長:ある意味、お互いの顔が見える10万都市である飯田は、この点においては有利であると思います。これからの地方都市はコミュニティの低下も心配ですが、それ以上にポテンシャルの低下が問題になります。その点飯田市は程よい規模を持っていると思います。ドイツにおいても元気のある都市は人口が10~15万人の都市が中心です。
   
 理事長:ドイツでは地域主権も成り立っているのでしょうね。
 
 市 長:もちろんそうです。国の役割と地域の役割が非常に明確です。インフラに関しては国が責任を持って作ります。では地域が何をするのかというと、ひとづくり、産業づくり、地域づくりです。
 
 理事長:同世代の連携の必要性が重要である中、本年度は15年後や未来の南信州を担う、我々責任世代の仲間と事業を通じて関わりを深めてきました。このような100年に一度の世界恐慌の中で、若きビジネスリーダーが説得力ある経営者として成長できるために、また地域でビジネスをしている以上地域のことを考えたり、まちづくりに参画する必要性なども訴えてきました。9月にかざこし子供の森公園をステージに開催させて頂きました「アースデイ南信州」においては、三遠南信大green birdということで県外の方々も集まり、愛せよ、故郷(ふるさと)をキャッチに、ティピというテントの中で、若者たちが音楽・ダンスなどで演じたり、食のブースでは地域の食材を利用しての料理が販売され、地球の環境を考える日だけに、リユース食器を使ったりもしました。フィナーレは、竹宵でのキャンドルが並べられ、故郷を合唱し、地域の方々と共に、この南信州の未来と地球の環境を考えることができました。参加者も2000名を超える方々が集まって頂き、我々にとっても感動的な事業を開催させて頂き、参加者からも好評でした。その中で、我々は「活気ある癒し」とも言っておりますが、南信州の人のパワー、特に若者のパワーの凄さを感じたところです。これからの南信州は、この若者のパワーにかかっており、若者が定住できる環境作りも必要だと考えます。
 
 市 長:これからはその若者パワーをどのような形で引っ張り出すかがポイントです。この地域はポテンシャルを持っている。私達の取り組みとしてLED防犯灯を開発した例ですが、環境省の補助金を得て、それをただ執行するだけの事業では環境産業の芽は育ちません。多くのLED防犯灯を付けるためにも、市販のものを買ってきて付けるのではなく、安くていいものを地域の中で作るという発想で地域のポテンシャルを引き出し、展開してきたのです。
 
 理事長:これは今までの行政の発想では考えられないことですね。既存の製品を助成金で買って付けるというのが今までの行政の発想だと思っておりました。
 
 市 長:そうなんです。今までの行政の発想ではできないことでした。予算の年度内執行というの制約の中で「開発から始めて製品化まで行うなど出来ないのではないか」という意見もありましたが、やってみると出来てしまう訳です。これは地元の中小企業の皆さんの技術の高さと、納期とコスト管理に関しては徹底されていたおかげです。無茶なことでもなく競争力のある防犯灯ができ、これを行政側でも他の多くの自治体に紹介をするなどして、飯田の環境産業の育成へと結びつけることができると考えています。こういう考え方やポテンシャルを引っ張り出す行動は、この厳しい時代だからこそ必要だと考えています。私はこれを統合的アプローチと言っておりますが、市役所の中でも産業・環境などの関係部が連携を取っていくことが重要です。
 
 理事長:この厳しい時代だからこそ、今こそ市長の言うような発想の転換が重要で、私達は「連携」の重要性を本年度も導き出しましたが、飯田市さんではすでに産業の分野で素晴らしい連携を築きあげており、感銘した次第です。 
 環境は先ほどのビジョンを達成するための一つの手法であるわけで、飯田市は全国13都市の一つとして環境モデル都市に選定されていますが、イクレイ登録決定も環境モデル都市のうち3番目で全国的にも先駆けての取り組みですね。
 
 市 長:イクレイは持続可能な自治体を目指す組織として1106自治体が参加するなど世界的には最大の組織であり、お互いが国境を越えてWIN-WINの関係を創って行きましょうというものです。ヨーロッパはその点進んでおり、こうしたネットワークはポテンシャルを引き出すいい原動力になります。ハードの話は見た目で判断できますが、ソフトの話は創り込みが必要です。日本で産学官連携がうまくいかないことが多いのは典型的な例ですね。お互いが背中を向きあわせていては産学官連携はできません。其々が向き合って協力していくことが必要です。

 理事長:市長の世界に向けての戦略的なお考えがとても見えてきます。
「人財」ということでは、以前も市長にお越しいただきパネルディスカッションをさせて頂きましたが、我々JCは、南信州の為に良き「人財」を育成する組織だと思います。世界的な組織なだけに、この名刺を持って全国・県外を歩かさせて頂きました。
 
 市 長:いいですね、この名刺。この大会のテーマである「和」もいいですね。多くの自治体が存在しますが、この南信州は「和して動く」ことのできる地域です。これは大変なことで、これができる地域とできない地域では大きな差が出ています。「和」とは、其々が我慢して手をつなぐというイメージを持たれるかもしれませんが、私は少し別の見方をしています。「和」とは議論することによって積み上げられるもので、お互いが活発な議論をして、相手の言っていることもしっかり聞いて認めて、納得した中で、まとまって動くということが重要です。この地域はそれが出来ており、まさに定住自立圏構想の協定締結ができたのも、そういった強みの表れです。
 
 理事長:リニア中央新幹線に関してのお考えをお聞かせ下さい。
 
 市 長:今は国が戦略的な判断をする時です。厳しい経済状況を乗り越えるために、内需拡大ということを言っている中で、まさにリニア中央新幹線は起爆剤になる。国の一つの将来像をプロジェクトとして示せるものであって、これからの日本の技術の強みを生かせるものでもあります。かつて日本の技術の象徴だった半導体や液品の生産の中心はアジアに移っております。このプロジェクトは内需の拡大に大きく貢献するものです。
 さらに、アメリカがかつて空洞化したときに航空機技術は手放さなかったように、日本はリニアの持つ高速輸送技術を手放さないようにして、国家戦略として世界に売ることを考えるべきです。本来、時速500キロのリニアの特性は大陸の中の交通手段として活かせるものです。
 
 理事長:もともと国家プロジェクトで動いてきただけに、早期実現を願っております。また飯田駅の実現に向けても、住民の意識の向上等があってこそ実現するもので、予想されないことも多く出てくると思いますから、リニア中央新幹線開通に向けての南信州全域でのまちづくりが急務だと感じております。
 
 市 長:当然飯田駅もこの地域の中にあって、最大限その効果がプラスになる地域づくりを考えていく必要があります。特に、若い方々のマインドというか意識の中に持って頂きたいことは、都会と飯田のどっちに住んで、どっちに通うかということです。これに将来の南信州定住自立圏の実現がかかっていると言っても過言ではないと思います。どっちに転ぶか今判断することは難しいのですが、まずはこの地域に定住したいと思うライフスタイルの創造が重要です。この地域の魅力をしっかり引きだしておけば、若い皆さんに定住してもらうことは可能だと考えています。
 
 理事長:JCへの期待を
 
 市 長:次の地域を担っていっていただく若い人たちには期待が大きいです。
前向きに地域の将来をとらえていってくれる皆さんです。地域の課題も若い世代の皆さんが乗り越えられるという決意でやっていけば必ずやれると信じていますので、JCの皆さんにはすべてにおいて期待しています。時に、ぜひ子育て世代を増やしていってほしいというのも私の願いの一つです。 
 
 理事長:デフレ・スパイラル、2番底が来ると予想される中では、地域に対しても、企業に対しても100年後を創造するなど発想の転換こそがいま重要と考えます。同世代の連携をさらに強化して、また若者らしく、思い切った発想と事業展開を心がけてまちづくりをやっていきたいと思います。

理事長 熊谷弘
2009年12月24日掲載
理事長対談  飯田市 牧野光朗市長
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