2010年度 理事長所信
社団法人飯田青年会議所 理事長 田中 寿
1.原点回帰 ~優れたリーダーを輩出する偉大な組織へ~
2.自分自身との対峙 ~自己研鑽からリーダーを育成する~
3.同世代の課題 ~次世代を担う私達の課題に挑む~
4.未来のリーダーへの投資 ~生きる力の覚醒~
5.歴史からの学び ~経験豊かな人物・歴史を物語る遺産に向き合う~
6.「挑戦」の継続 ~次の50年に繋ぐ~
1.原点回帰 ~優れたリーダーを輩出する偉大な組織へ~
自然は、人間がいなければ育つ。原生林はその証です。
原生林には間伐作業は不要です。間伐が必要なのは人工的に植樹をした森だけ。自然は人間が暮らすまちを必要としません。
まちは、人間が生きやすくするために人間が作ってきたもの。
雨風をしのぎ、食料をたくわえ、か弱い子どもや女性、お年寄りを病気や動物から守る。まちづくりのはじまりは、生き残ることでした。それが現在では、生きる機能としての衣食住は足りるどころか、溢れかえっています。手足が2本ずつしかない人間は、両手いっぱいに物を抱えて満足したつもりでいたら、気が付くと何かを置いてきてしまった。
原色で塗りつけたビルを建てる。ゴミを投げ捨てる。住まない住居をほったらかしにして新しい住居に移り住む。飽きた服や車はさっさと買い替える。まずい食事は躊躇なく残す。ランチバイキングでは食べられる量でないのに先を急いで山盛りに料理をとる。
捨てても持ち続けても物欲の塊。これらは全て人間がやっていること。私達は、今では地球にとって最も存在価値のない生き物となってしまいました。
振り返って、まちづくりを標榜する(社)飯田青年会議所はどうでしょう。
社会活動の基盤が満たされていない時代に、先輩方が事業を先駆けて取り組んだ。だからこそ、各地で評価されてきました。しかし現在は、仕事や子育て、学生生活をしながら社会活動を行う人たちや団体が多々あります。加えて2005年末には政府から次のような報告がされました。人口減少。出生数から死亡者数を差し引いた結果、人口動態調査を開始してから初めて、しかも1万人もの減少と報告。わずか3年後の2008年度は5万1千人の減少と報告されました。日本の都会も田舎も、一方で物は溢れかえり他方では人間が減り続けている現在、先輩方のすばらしい功績にすがるような活動を続けていては、私達の組織は50年以上続いた一大政党の例を挙げるまでもなく、わずか数年で存在価値を失い、飯田下伊那の人々から「退場勧告」を受けるのは明白です。
大きな時代の変化を先取りして、経営者・団体・NPOなどあらゆる組織に向けて新たな方向性を示した「ビジョナリーカンパニー」という本が1995年に発表されました。ここでは、組織としての良好な状態、あるいは可もなく不可もない状態に満足せずに理想を実現する信念を持ちつづけ、現在直面している最も厳しい課題に目を向けながら、自らの持つ強みを最大限に活かして成長を遂げた、偉大な企業や組織の姿を描いています。
(社)飯田青年会議所は、1年間の任期で真剣に集中して取り組むことで、様々なことを私に教えてくれました。そこから得られた最も優れたもの、この組織の強みは、事業を成功させる方法論でも人脈作りでもありません。それは、49年間行われたまちづくりという良好な活動の中心にある、指導者を育成する力であると、私は考えます。
近年の青年会議所入会者は、すすんで入会する者よりも、経営者からご紹介を受けて入会する者が多いようです。それは、能力がありながら住み慣れた環境に妥協してぬるま湯に浸かっている者を、営利から離れた世界で同年代の仲間から鍛えられることで大きく成長してほしいという親心からです。
JAYCEEを送り出す全ての方の親心に応えるために、リーダーを育成する強みを中心におき、最後まであきらめずに挑む姿勢を1年間徹底する。今年はリーダー育成の強みに絞り込み、私達自身に挑み続けることで、JCの枠組みを越えて優れた若きリーダーを輩出する偉大なる組織への飛躍の年とします。
2.自分自身との対峙 ~自己研鑽からリーダーを育成する~
あらゆる組織のリーダーであるメンバーの自己研鑽がなされた時に、自分の家族・会社・働く仲間・友人知人への拡がりが生まれる。スタートは常に自分から。
私達の成長が家庭・社員・会社を成長させ、幸せにする原動力になる。
それは自分自身が避けて通れない事実を正面から受け止め、自分の血肉にすることから始まります。情報過多と厳しい事実を目の前にすると、ひとは現実逃避に走ります。しかしリーダーは、自らにとって最も厳しい事実に真正面から挑まなければなりません。一度では越えられない壁であっても、あきらめずに衆知を集め二度三度とチャレンジすることで壁を乗り越え、その時には多くの気づきや広い視野を身につけているのです。
(社)飯田青年会議所の持つ強みに磨きをかけながら、時代に合った新しいリーダー像を進んで学ぶことで、一人ひとりの成長が促され組織としての強みが更に活かされます。リーダーとしての研鑽をJC内での共有にとどめては、宝の持ち腐れです。地元にいる同世代にも参加を呼びかけ、お互いに成長することで、会員拡大に結びつけていきます。
3.同世代の課題 ~次世代を担う私達の課題に挑む~
JC世代である団塊ジュニアは、親世代に次いで人口比率で2番目に多く、すでに社会の中心となる世代です。人口減少という問題はもはや他人事ではありません。親世代の看取りだけでなく、独身者が増えているJC世代にとっては、自分達の後見人がいないことなど将来につながる最重要課題となっています。税金で老後の生活をまかなえたとしても、こころのケアは人間にしかできません。
人間は、たった一人では生きてゆけません。
しかし、たった一人でも寄り添ってくれる人、慕ってくれる人さえいれば、人間は内に秘めた生きる力を発揮することができるのです。
地元のリーダーとして、私達世代の交流を積極的に働きかけることで、飯田下伊那の次世代をになう青年の横のつながりを生みだします。リーダーとしての研鑽を積んだ私達が、陰となり日向となりながら、地元地域の将来につながる交流の機会を提供します。市町村やNPOが取り組んでいないJCだからできる活動に挑み、同世代の仲間が元気になることで地域の活力を引き起こす発火点の年とします。
4.未来のリーダーへの投資 ~生きる力の覚醒~
挑戦することは、自らが取り組むことばかりではありません。そんな場面を提供することも、私達が地元に貢献でき、自分自身を磨くことに結びつきます。
子どもの可能性にかける。
私達の未来への投資は、次世代リーダー育成への挑戦です。
私達の幼い頃は、親元を離れ出すと、いつのまにか雨が降っても泥まみれになっても駆け回り、日が暮れるまで遊び続けるような逞しさ・強さを身につける子どもや、親の手伝いと称して大人と一緒に仕事をする子どもも珍しくはありませんでした。つまり、子どもの持つ好奇心を引き出しながら人間としての生命力を育み、教科書には無いマナーや人間関係など大人の世界を学ぶことのできる現実が、手に届く場所にあったのです。
今の子ども達は、情報が多すぎるが故に危険に対して過保護であり、未体験の知っていることを実体験と錯覚してしまいがちです。そんな子ども達には、ありのままの自然に触れることや真剣さを求められる大人の世界に、少しでも早くできるだけ多く触れて、逞しさ・強さあふれる生命力をみがく機会が必要です。環境に適応する逞しさやしたたかさの原点である生きる力を子ども達に目覚めさせ、私達も昔を思い出してワクワクする、そんな場面を提供します。
5.歴史からの学び ~経験豊かな人物・歴史を物語る遺産に向き合う~
40年未満のわずかな経験。昭和末期と平成のバブルを経験したとはいえ、平和な時代を歩んできた私達。自分で体験できないことだからこそ、恥をかき捨てて教科書に載っている歴史に直に触れる体験は貴重です。そのチャンスは、今しかありません。殊に、戦争やそれと同等の犠牲者を生み出した大災害という負の歴史を二度と起こさないためにも、次世代リーダーである私達の責任は非常に重いのです。
「不易流行」の言葉の通り、いつの時代にも変わりゆくものと変えてはならないものがあります。それを見定めるためにも、自ら足を運び、直に触れ、自分の経験に昇華させ、地元地域だけでなく長野県、日本をになう大人として成長します。
また、今年度は(社)飯田青年会議所誕生からちょうど半世紀。時代の変化は、常に個人だけでなく組織の変化をも求めてきます。49年間の歴史と現代の優れた知恵を学び、重ね合わせることで、私達の独自性を引き出します。時代が変化しても常に優れたリーダーを輩出する偉大な組織の姿を描くことで、全国からも注目を浴びる飯田下伊那の未来へと繋いでゆきます。
6.「挑戦」の継続 ~次の50年に繋ぐ~
『全体的な状況がきわめて厳しいなか、小さな部分で偉大な実績をあげるために、いま、何ができるだろうか。』
ビジョナリーカンパニーに書かれている一節は、現在の全ての組織や個人に当てはまります。私は、JAYCEEとその側にいる人達とこの地域という小さな部分に中心軸を絞りました。飯田下伊那は、東京まで片道4時間もかかる東西を山に囲まれた陸の孤島です。だからこそ、この絞り込んだ場所とそこに住むわずかな人たちが活気に満ちあふれることで、私達を取り巻く人々だけでなく、県内外の人々をも引きつけることができるのです。JAYCEEにとって成長の糧となる体験は、同じ理想や目的をもつ地元の皆様にとっても有益なことです。1年を通じて地元に広く参加を呼び掛けることで、先輩方の築かれた「まちづくり」に必ず結実します。
『最後には必ず偉大な組織になるという確信を失ってはならない。そして同時に自分たちがおかれている現実のなかで、もっとも厳しい事実を直視しなければならない。』
50年目の節目の年に、私達がこの言葉を常に抱き、挑み続ける姿勢を身につけることで、新たな飯田下伊那の姿と、(社)飯田青年会議所の新たな50年へと繋いでゆきます。
参考文献
ビジョナリーカンパニージェームズ・C・コリンズ/ジェリー・I・ポラス 著
ビジョナリーカンパニー②飛躍の法則 ジェームズ・C・コリンズ 著
ビジョナリーカンパニー特別編 ジェームズ・C・コリンズ 著
いずれも日経BP社 刊

